『カメのきた道―甲羅に秘められた2億年の生命進化(平山 廉/著 NHKブックス/刊)』感想
- 2012-07/17 (Tue)
- レビュー:書籍
評価 ・・・ ★★★★★
2か月もブログをほったらかしていた・・・いろいろと用事が立て込んでまして・・・すいません!許してください何でもしますから!お詫びとしてチョコチョコ過去記事を修正してます。
というわけで、当ブログ初の「書籍」カテゴリは『カメの来た道』です。
内容
中生代の地球で、恐竜は巨大化の道を選び地球上を制覇したかに見えた。一方、哺乳類は一日食物をとらないと生死にかかわるという高代謝を選択し、餌獲得のために知能を発達させ、次の主役となった。しかしカメは第三の道である低代謝を選択し、餌がなければ1ヶ月以上でも待つことができる体を獲得した。その結果、ガラパゴスゾウガメは200歳を超える寿命の固体も確認されている。あわただしく攻撃的に生きる40年(自然状態でのサルの寿命)とゆっくり打たれ強く生きる200年のどちらに価値があるかはだれにも決められない。地球生命を相対化する視点から語る、意欲的なカメの進化学入門。(「BOOK」データベースより)
感想
カメを扱った本というと、一般向けの飼育方法の説明本か、爬虫類マニアのためのカタログと言ったような、カメをペットとして扱った本がほとんどで、それ以外の物となると爬虫類専門の図鑑か、分類学者が読むような小難しい本ぐらいしかありませんでした。
本書は、古生物学者が、化石カメ類を基本にカメの進化を解説した、恐らくほぼ唯一ではないかという本です。
著者の平山廉氏は99年に『最新恐竜学』という本を書かれていますが、その内容は『恐竜はマニラプトル類以外ティラノサウルスもブラキオサウルスもトリケラトプスもみーーんな変温動物。マニラプトル類は恐竜というより鳥類。理由は脳味噌が小さいから。絶滅した理由は環境変化に耐えれずに少しづつ数を減らしていったから。』、つまり『恐竜は馬鹿でのろまな失敗作』という70年代以前のような、もうすぐ新世紀になろうかという時に出版されたとは思えないトンデモ本スレスレの内容でしたが(そもそも鳥類と恐竜を分けて考えることがナンセンスなような・・・)、平山氏の専門である化石カメ類を扱った本書ではその知識がいかんなく発揮され、素晴らしい本となっています。恐竜画家、小田隆氏による超精密な復元画・生態画もまた素晴らしい。
まず最初にカメ類の基本的な体構造や、現生カメ類の仲間の紹介があり、中盤では化石カメ類とカメの進化の解説が行われ、最後に人類とカメ類の関係の話があります。
特に注目していただきたいのは化石カメ類とカメの進化の解説です。オドントケリスについての記述が一切ありませんが、時期的にしょうがないことです。一昔前の本では必ず書かれていたカメ無弓類説の否定(現在では主竜類の仲間という説が一般的です)、潜頚亜目と曲頚亜目の分化などが解説されています。
私が特に驚いたのは、つい数千年前までオーストラリアに生息していたメイオラニアが、三畳紀後期にいたプロガノケリスの仲間の生き残りという説です。両者を比べてみると、なるほどトゲトゲな尾や引っ込められない首などよく似ていますが、2億年以上も生き延びてきたのは凄いことです。本書では哺乳類でいう有袋類や単孔類のような存在だと書かれています。
ラストの人類とカメ類の話は、私的にはちょっと蛇足に感じましたが、まぁ一般向けの本なのでしょうがないことでしょう。
本書は、ある意味で“貴重な”本です。
カメのきた道―甲羅に秘められた2億年の生命進化 (NHKブックス) (2007/10) 平山 廉 商品詳細を見る |
文庫サイズなのでお安いです。
最新恐竜学 (平凡社新書) (1999/07) 平山 廉、小田 隆 他 商品詳細を見る |
この本を説明した文章で「恐竜はやっぱり変温動物」という文章を見た時には思わず「違うからーーーー!いや違うからーーーー!!」と叫びそうになってしまいました。
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